インタビュー

「人も作物も一緒。自ら育っていく環境を作る。」 有機農業と人を育てる想いがリンクする、 帰農志塾2代目塾長 戸松正行さんにインタビュー!

「人も作物も一緒。自ら育っていく環境を作る。」
有機農業と人を育てる想いがリンクする、
帰農志塾2代目塾長 戸松正行さんにインタビュー!

農場の説明をする戸松さん

那須烏山市の中山地区にある有機農場「帰農志塾」。
農家の後継者不足問題が叫ばれる中、農業の担い手を育成することを目的として1976年に初代塾長の戸松正さんが設立されました。
現在こちらの2代目塾長を務めているのが戸松正行さん(39歳)です。
市内の国見地区にある荒廃した棚田を試験的に稲作するなど、市が抱える課題にも一役買っています。

今回は戸松さんのこれまでの経歴から有機農業や人材育成に対する想いを聞いてみました。
帰農志塾は厳しいという声も聞きますが、その辺り実際どうなの?といったことにも触れてみたのでどうぞ!

春の農場の風景

菜の花もたくさん咲いていて綺麗です。

農場には養鶏場もあります。

平飼いで育った鶏の健康で新鮮な卵。

ベルギーの女の子に、炊き上がりのふっくらした本当のおいしいお米を食べさせてあげたい、と思った。

●戸松さんのこれまでの生い立ちを聞かせていただけますか?

 出身は新潟です。中学生の頃、社長になりたいと思って、それで進学校に入って愛知大学経営学部へ進みました。大学に進んだはいいけど、実際社長っていってもどうなの?じゃあ俺何売るの?って思い始めて。
俺が売れるものないよなと。で、まぁとりあえずお金を貯めて海外へ行こうと思って、カナダのモントリオールへ留学に行って。日本から離れるといろんなことが見えてくるんだよね。

 当時、寮に住んでいて、いろんな国の人がいて、その中の一人にベルギーの女の子がいました。その子から、ベルギーではじゃがいもが主食だけど日本の主食は?って聞かれて、お米だよって教えたら、ベルギーでもお米食べるよっと言って作ってくれて。そしたらコンフレークみたいな乾燥したコメを小さな鍋でぐつぐつと煮て「はい」って出されて。お粥をお米といって出してた。それを見て、故郷の新潟のピンと立った炊き上がりのふっくらした本当のおいしいお米を食べさせてあげたい、と思ったんだよね。
それがきっかけで、食べ物で人を感動させたいと思った。で、日本に帰ってきました。
日本にいたら分からなかったことだよね。

昨年、帰農志塾の「春の集い」でいただいた新鮮野菜。

会員さんや市内の人を集めたイベント「春の集い」での一コマ。野草の天ぷらを頂きました!

イベント参加者へ農場の案内をする戸松さん。

社長になりたかった。自分で責任取りたかったんだよね。農業で独立する=社長になることだから、ドンピシャだった。

 食べ物で人を感動させたいっていっても、料理ができないとおいしさって伝えられない。だから日本に帰ってから3年ぐらい名古屋の飲食店で働いていました。そこで雇われて働いているうちに、食材って高いってことが分かった。有機なんて本当高い。だからそこでは安い野菜を買って料理してたんだけど、これは自分で作らないといけないなと思って。それで新潟へ戻ってコメ作りの道へ進みました。

 で、作ったはいいけど次に売り方が分からないなと。なので、今度は新潟の中央卸市場で働くことにしました。
市場でたくさんの農家さんと関わって気づいたんだけど、有機はおいしいんだよね。
 そのころ、そろそろ自分の道も固めないといけないなと思ってた時期で、やっぱり自分で作ろうと。
作るところから販売、経営まで全部自分でやりたかった。自分で責任取りたかったんだよね。
それで全部学べるということで、29歳の時に帰農志塾へ入りました。

農業で独立する=社長になることだから、もともと社長になりたかった自分にはドンピシャだった。
それで、ここを卒業したら故郷の新潟で就農しようかなと思ってたんだけど、先代には娘さんがいてですね、恋に落ちて自分が婿になって跡を継ぎました。

  ー なるほど!奥様との出会いといい、ここに来るべきして来た感じですね! ー

見学の方にその場で採って野菜の味見をさせてくれました。

事前にご連絡すれば戸松さんの案内で農場見学ができます。 

『育てる』の考え方も二通りあると思ってて。「育てる」と「育っていく」。
自分は「育っていく」の方。大事なのは環境づくり。

●帰農志塾は厳しいと聞きますが、そのあたりは?

 厳しいの意味合いもいろいろありますよね。うちはまず労働時間が長い。基本的には明るい時には農作業をしています。夏の一番早い時は4時半から始まって、日が落ちるまでずっと作業している。そのあとに売上管理などの事務作業をやるし、塾生は配送の準備もやらないといけないし。
就農支援学校なんかは朝8時とかだけど、それは人間の都合でやってるからそうなるんだよね。うちは作物の都合に合わせて働くので。農業に集中できる環境といえますが、農業が嫌いな人ややる気がない人は苦痛でしょうね。

 あと休みが少ない。一応、週一回休みはあるけど、イベントなんかも休日にやっているから、休みが無い時もあります。まあ、独立したらしばらくは休みなんてないし、それに慣れといた方が良いかな。

  ー 何を厳しいと捉えるかはその人次第ですね。確かに先日の塾生インタビューでもサラリーマンの方が大変という方もいましたね。 ー

 人を育てるが一番大変。自分でやった方が早いもんね。
『育てる』の考え方も二通りあると思ってて。「育てる」と「育っていく」。自分の考えは後者で「育っていく」の方。
 最低限のことは教えるけど、あとは育っていく環境を整える。それが僕の仕事だと思ってます。気づいたことは言うし、たまにミーティングもするけど、結局自分から動かないと育っていかない。子育てもそうだよね。片づけろとかあーだこーだ言ってもやらないですよね。
だから、自分から動くような環境をつくって自ら成長していってくれるのが理想。
植物と一緒だよね。大事なのは環境づくり。

  ー 植物も人も一緒、有機農業の方法と人を育てる考え方が同じですね。 ー

見学の方へそのときの出荷の説明や、就農に必要な経費なども説明して頂きました。

土づくりの説明。帰農志塾では土から自分たちで作っています。

●昨年から、荒廃した国見の棚田を試験的に稲作しましたが、それはどういった経緯で?

 市役所の方から、誰か塾生でやる人いないですかね、と話が来て。棚田っていっても小さいし、そこで収益上げるのは厳しい。国見で就農しても正直生活はしていけないなと。ちゃんとした畑もないし。市役所はただ紹介するだけで具体的に動かないし、動けない。でも誰かがやらないとね。それに、やっていたらいつか誰かやりたいって人が出てくるかもしれない。最初は無理だと思ったけど、やってみないことには分からないし。
ま、誰もやらないからやった、という感じですね。

昨年の国見の棚田を稲作したといきの様子です。「おっしゃー!」(とは言っていませんでしたが)気合い十分。

棚田での田植えはすべて手作業。

棚田での作業風景。

太陽光パネルで作ったイノシシ除けの電気柵。戸松さんの自作です。

●市への要望などはありますか?

 職員の人に限った話じゃないけど、もっとみんな出てくればいいのにと思う。
あと役場には若い子もいっぱいいるだろうに、もっと個人で参加したらいいのにね。うちのイベントなんかにも来てほしいですよね。
みんな、なかなか動かないんだよね。役場の人も普段、週末とか自分のところで田畑やっている人も多いんだから、棚田だってもっと早く手を打てただろうに。

田んぼに米ぬかを撒いているところ。農薬や除草剤は使っていません。

 

祭をやりたいですね!ちゃんとした純粋な「収穫祭」。自分で採って食べるって大事ですよ。

●今後、帰農志塾として、また個人的にやりたいことはありますか?

 塾としては規模を広げていきたい。人手不足だしうちみたいなマニアックは農家はなかなか難しいけどね。
うちの野菜(有機野菜)が当たり前だとおもってる。なので有機の割合を増やしていきたい。そうすればコンビニやスーパーで普通に買えるようになる。有機の割合も以前は0.1%以下だったのが今は0.4%になった。それを2~3割にしていきたい。国も一応支援してるし不可能ではない。ちょっと技術革新が必要だけど。害虫に対してとか、病気になりにくい菌とか。そういったものがでてくれば、有機がもっとやりやすくなるよね。

 個人的には祭りをやりたいですね。JA祭りとかマルシェとかもあるけど、何の祭りなのかよく分からないじゃないですか。ちゃんとした純粋な「収穫祭」をやれたらいいよね。
自分で採って食べるって大事ですよ。だから「旬」を感じられる収穫祭はいいよね。
で、そこでみんなで野菜体操を踊ると。

春の集いでの一コマ。イベントなどでみんなで野菜体操を踊っています!

 ー 野菜体操はいつから取り入れているんですか? -

 自分の代から取り入れました。以前はイベントで盛り上げようと塾生に一発芸とかやらせていたんだけど、あんまり盛り上がらないし面白くなくて。で、みんなでできるし、イベントでも披露できるので高知野菜体操を取り入れました。子どもも一緒に踊れるし!
会員さん向けにやっていたイベントを今は会員でない方や市内の方にももっと来てもらおうと思っています。

 ー なるほど!祭りで大勢で野菜体操が踊れたらいいですね!今後の帰農志塾のイベントも楽しみです。 ー

農場内の小高い丘からの眺め。


~インタビューを終えて~
 今回強く感じたのは、『育てる』ということに対して、戸松さんの考えが一貫していることです。
作物に対しても、人に対しても同じ姿勢なんだなと。
どちらも自ら『育っていく』環境を作る、それが戸松さんの考えであり、今の帰農志塾の方針。
有機農業と人を育てる姿勢が一貫しているので説得力がありました。
 棚田についても、「誰もやらないからやった」「やってみないことには分からない」という言葉が印象に残っています。
誰も手を挙げないことをやるというのは、とても勇気のいることです。
そういった面でも帰農志塾は市にとっても大きな財産だと思います。

社長になりたい、という中学生のころの夢が今につながっているのもかっこいいですね。
農場でのイベントはもちろん、事前に連絡を入れれば見学や体験も受け入れているので、ぜひ帰農志塾の農場へ一度足を運んでほしい、そして戸松さんに会いに来てほしいです。

春の農場は桜も咲いていました!


帰農志塾ホームページ
 http://www.kinousijyuku.com/
※事前に連絡すれば農場の見学もさせていただけます。必ず訪問可能な日時を確認してから伺ってください。
塾生インタビューもぜひ!➡ http://yamizo830.com/?p=134

 

 

えのもと

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東京生まれ埼玉育ちの元OL。
栃木県那須烏山市 地域おこし協力隊の一人。
お米と猫と洋楽が好き。好きな海外バンドが来日すると弾丸で上京します。

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