インタビュー

30代・Uターン・後継ぎインタビュー!第二弾【 烏山合同タクシー株式会社 矢板隆史さん】

【30代・Uターン・後継ぎ インタビュー! 第二弾】

 烏山合同タクシー株式会社 矢板隆史さん

「帰ってきたのは後悔しないという自分のため」
東京のベンチャー企業から地元へ戻ってきたタクシー運転手。
烏山合同タクシー株式会社 矢板隆史さんインタビュー!

 JR烏山駅前に事務所を構える烏山合同タクシー。駅を降りると目の前に看板が見えます。
今回はこちらの4代目である矢板隆史さんにお話をお伺いさせて頂きました。
矢板さんも一度、那須烏山市を離れ、再度戻ってきた「30代・後継ぎ・Uターン者」です。
 時代の変化とともに求められるサービスも変わったきたタクシー業界。
東京から地元へ戻ってタクシー運転手となった矢板さんへ、仕事に対する想いや街の変遷などお聞きしました。

プロフィール
栃木県那須烏山市(旧烏山町)出身。高校卒業後、大学進学により東京へ。
大学卒業後、携帯電話のゲームサイトを運営しているベンチャー企業へ就職。
その後、家業である合同タクシーを継ぐため6年前にUターン。

烏山合同タクシー事務所前にて、矢板さんとタクシー。

ひいおじいちゃんたちが数人で出資しあって作った会社。
だから「合同タクシー」っていうんです。

・矢板さんのお仕事はいわゆるタクシー運転手ですよね?
 そうです。一般的には運輸に枠組みされますが、実際はサービス業ですね。
お客様満足度を高めていくという点で、接客やおもてなしといったサービス業の要素が求められる。
そういう意味で僕は運輸というより、サービス業と捉えています。

・矢板さんで何代目になるのですか?
 自分で4代目です。会社を起こしたのは曾祖父の代です。ひいおじいちゃんたちが数人で出資しあって作った会社。だから「合同タクシー」っていうんです。1900年代初頭に創業した会社ですね。

 ― 「合同タクシー」の名前の由来はそういうことだったんですね!当時の社名を今も引き継いでいるんですね。歴史を感じます。 ―

 先輩方の話を聞くと、バブル時代のタクシードライバーは死ぬほど忙しくて、烏山で飲んで2次会は宇都宮まで行く、なんてことも頻繁にあったようです。当時はチップだけでも相当稼いだんじゃないでしょうか。 

 ー そんな時代もあったのですね!まさにバブル全盛期ですね。 ―

 烏山線が着いて駅でタクシーを待つ人が大勢並んでいた時代ですからね。一時間並んでもまだ乗れないで待ってる人がいたとか。それくらいタクシーの利用者が多かったんです。電車でお盆や年末年始に実家へ帰省する方も利用してました。今は帰省するのも車が多いし、ご家族に駅まで送迎してもらっているようです。

 ― 時代とともにタクシー業界を取り巻く状況もだいぶ変わってきましたね。 ―

・会社の自慢、イチオシ、こだわりはなんですか?
 自慢という意味ではドライバーです。僕は今33歳なんですが、一番近い先輩で60歳前とか。ドライバーの先輩方はだいたい60歳から70歳前後。例えば『〇〇地区の□□さんのところに行きたい』とか、『昔1回行ったことがあってこんな目印があるところで、、』といった曖昧なヒントから正確なルートやあの辺かな?というのを割り出していける。
長年の経験と知識の蓄積がないと分からないですよね。ナビの導入なども一つの方法ですが費用がかかりますので、うちはひとを育てる方向で頑張る。そういう意味で自慢はドライバーですね!
 あと、僕がわりと女子力高いので(笑)、女子目線で細かいところに配慮ができます。タクシー独特の匂いとか気になる方もいるので、いい香りのする芳香剤を置いてみたり。そういう細かい気遣いができるのも売りです。

 - 細かい気配り、とても大事ですよね。男性ばかりだからこそ、矢板さんの女子力の高さはとても重要だと思います! -

インタビュー中の様子。笑顔で応対していただき、こちらも安心してお話聞けました!

自分が一番後悔しない方法はなんだろう?と。一番後悔しない選択をしたかったんです。

・地元を離れた経緯と戻ってきた経緯を教えてくれますか?
 高校生当時、卒業したら当たり前のように進学するために出るもんだと思っていました。お恥ずかしい話ですが、目的意識を持っていたわけではないんです。
 大学卒業後はそのまま東京で就職しました。ガラケー用のゲームサイトの運営をしているベンチャー企業で、小さいマンションの1室に従業員5人くらいで働いていました。

 ― そうなんですか!バリバリのベンチャー企業ですね。 ―

 ベンチャーだったので、経営など間近で社長の仕事が見れたのはとてもよかったです。
当時、会社が運営していたゲームサイトが当たって、売上もどんどん右肩上がりに増えていって好調でした。
そのころに東日本大震災が起こりまして。
ゲームサイトに熱中する人って都会より地方の人の方が多いんですよ。
携帯をいじる時間が長いんですよね、娯楽が少ないから。
でも震災が起きて、ゲームにお金をかけている場合ではないという状況になり、売上も徐々に下がっていきました。

 ― なるほど。都心より地方の方が携帯ゲームに熱中するというのは意外です。でも確かに地方は娯楽が少ないですよね。 ―

 会社の売り上げが下がっていって、今後どうしようかと考えまして。
社長からは他の会社も斡旋してもらったのですが、頭の片隅にずっと「いつか家業を継がないといけないな」というのがあったんです。
これからどうするか真剣に考えて、自分が一番後悔しない方法はなんだろう?と。
一番後悔しない選択をしたかったんです。
 実は震災の前に一度父親が倒れて、そのときはすぐ回復したのですが、父親に何も教われないというのが一番後悔するな、と思ったんです。
 今まで散々好き勝手やらせてもらって、その恩返しではないですけど。
あくまでも、帰ってきたのは後悔しないっていう自分のためですから。それで、家業を継ぐことを決めて、震災の一年後くらいにこっちへ戻ってきました。

 ― 一番後悔しない選択がお父様から仕事を教わることだったんですね。 ―

 父親と一緒に働くようになって、父親に関する新しい発見がありますね。
家の顔と違った仕事の顔が見られたり。自分が子供の頃は、父親とまともに話すことってそんなになかったんですよね。
 この仕事は夜が遅いので、父親が帰ってくる時間は僕はすでに寝てましたし、朝は自分が登校するころは父親はまだ寝てたり。顔を合わせることがあまりなかったので今は新鮮です。

・事業を通じて分かる「この街ならでは」なことはありますか? 
 運転でいうと、人口が多いところに比べてちょっとゆっくりな気がします。たぶんお年寄りが多いからかと思いますね。それだけ高齢でも運転せざるをえない状況の方が多いということですよね。
 あと、まちの方、特にお年寄りの方々、とっても我慢強いなと感じます。女性はもちろん、男性も男気がある方が多いという印象ですね。

  ― 今後ますます高齢のドライバーは増えていきますよね。 ―

・デマンド交通を使われている方多いですか?
 昔バスが通っていたけど今は廃止になってしまった所なんかでは特に利用する方が多いですね。公共交通機関が行き届かないような場所に住んでいる方々に、少しでもお役に立てればと思います。
 ただデマンドも、他の人と一緒になるのが嫌だとか、いろいろな場所に寄るので時間が読めない、時間がかかる、予約がめんどくさいなどの理由で利用をためらう方もいらっしゃいます。でも、料金は安くてお得なんです。普通のタクシーだとデマンドの10倍くらいかかる場所もありますし。高齢化率はどんどん上がっていきますし、デマンド交通は今後絶対必要だと思います。もう少し浸透すると利用者も増えると思いますね。
 ※デマンド交通とは、予約した乗客が乗り合いで、希望する場所から目的地への移動手段を低額で提供する新しい公共交通サービスです。那須烏山市のデマンド交通についてはこちらをご参照ください。↓
http://www.city.nasukarasuyama.lg.jp/index.cfm/7,13164,74,312,html

JR烏山駅の目前にある事務所。

・この街で働くこと、暮らすことについてどう思われますか?
 この町で働く、暮らすっていうのは人との関わりが大事だと思います。
心を開けばこんなに暮らしやすいところもないと思うので。最初は排他的ですけど、懐に入れば温かくしてくれるし気にかけてくれる。ありがたいですよね。
 あと、定年後に移住してきた方で、ご主人を先に亡くされて免許を持っていない奥さんだけが残って一人で暮らしている方も見受けます。周りに知り合いも少なく、おばあちゃん一人で買い物にも行けない。そういった理由でタクシーを利用する方もいますね。
 この仕事をしていると様々な事情を抱えた方を乗せます。本当にいろんな方がいる。
買い物や病院に行くのにタクシーを利用するおばあちゃんとか、タクシーがないと暮らしていけない方もいる。そういう意味では仕事を通してその人の人生の一部に携わっていると思います。

 ― なるほど。そういった事情が分かるのは、タクシー運転手をされているからこそですね。 ―

・一旦、外に出たからこそ感じる、このまちのいいところ、課題だと思うところは?
 いいところは、とにかく時間の流れがゆっくりなところですね。都会はちゃかちゃかして日々落ち着かない感じで。こっちは忙しい日といってもどこかのんびりしてる。そういう意味で、都会より心に余裕を持って働けますね。

 課題に思うのは、新しいことに対する寛容さを持つことですかね。他の自治体でも言えることかもしれませんが。
なんとしなきゃというのはみんな持っていて望んではいるんだけど、新しいことに抵抗があるのかなと。新しいことを起こした人にはそれなりの責任もありますが、失敗したらそれ以上の叩かれ方をする。そんな気がします。新しいことをする人をサポートしていける体制や、もっと応援してくれる雰囲気があるとありがたいなと思います。

合同タクシーの2階にあるコミュニティスペースでお話を聞かせて頂きました。

・まちについて以前と変わったところ、変らないところはどんなところですか?
 シャッターを下ろしているお店が多くなったとかは当然なんですが、それで町並みが変わったかというと、別のように思います。
ですが、意識は変わったような気がします。こっちに帰って感じたのは、ネガティブだなと思ったんです。こんなに暗かったっけ?って。ですが、僕も馴染んでしまいました (笑)。

・ご自身の中で以前と変わったところ、変わらないところは?
 自分の中で一番変わったと思うのは、仕事に対する意識です。
前の会社のときとはそこが一番変わりました。
 自分がやらなきゃいけない、自分の立場的に逃げちゃいけない、という意識のもと働いてみると全然違う。
立場が人を育てる、と言いますが、自分もそれを今実感しています。
社内の立ち位置では自分は一番下っ端ですが、将来的に責任を持つのは自分なので。
責任感によって人は成長するんだなと思いました。

 あと、環境が変わって、性格的に明るくなったなと思います(笑)。以前はパソコンにかじりついて働いていたのですが、この仕事をするようになって人とたくさん話しますからね。おかげで人間らしくなったかなと思います(笑)。
 変わらないでいるのは、一人の時間を大切にすること。
人とのつながりがとても大事ですけど、自分はオンオフはっきりつけたいので、一人の時間は以前と変わらず大切にしています。

福祉とサービス、この二つの充実に重点を置いていきたい。

・最後に、矢板さんの仕事への想い、今後やりたいことを教えてください!
 福祉とサービス、この二つの充実に重点を置いていきたいです。
市内で今一番人口が多い世代は70代くらいだと思います。先ほども買い物や病院に行くのにタクシーを利用する方がいると言いましたが、今後、こういう役割は増えていくと思います。より、福祉の方向に向かっていくのは自然な流れだと。昔は夜の売上が多かったですが、今後は昼間の利用の需要、福祉の需要が高まっていくと思います。そこに重点を置いていきたいです。車椅子をそのまま乗せられるUDタクシーなんかもいずれ入れたいです。

 起死回生の策はない。そんな都合のいいものはないと思っています(笑)。何かをプラスの方向に変えていくというのは時間のかかることなので、細かいことを少しずつ積み重ねていきたいです。例えば、ドライバーがドアを開けてくれる、傘をさしてお店の中まで一緒に行ってあげる、とか。
 タクシーは他の交通機関より高いじゃないですか。1キロいくらと県ですでに決められていますし。
なので、サービスやおもてなしに力を入れていきたい。100mでも200mでも乗りたいと思ってもらえるような会社を目指したいですね。利益は後からついてくるものだと思っていますから。まずはお客様を満足させること、おもてなしの精神、そこを一番にがんばっていきたいです!
 ※UDタクシー:ユニバーサルデザインタクシーとは、健康な方はもちろんのこと、足腰の弱い高齢者、車いす使用者、ベビーカー利用の親子連れ、妊娠中の方など、誰もが利用しやすい”みんなにやさしい新しいタクシー車両”であり、街中で呼び止めても良し予約しても良しの誰もが普通に使える一般のタクシーです。(国土交通省 UDタクシー研究会 HPより)  http://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_koutu/tabi2/ud-taxi/ud-teach.html

会社の前にてタクシーと笑顔の矢板さん。

~ インタビューを終えて ~

 30代・Uターン・後継ぎ・インタビュー第2弾!ということで今回、矢板さんへインタビューさせて頂きました。
高齢化が進み、お年寄りのタクシー需要が増えていく中、サービスと福祉の充実を図っていきたい、という矢板さんの言葉に頼もしさを感じました。
 また「何かをプラスの方向に変えていくのは時間がかかる」というお話では、まちづくりや地域活性にも同じことが言えるのではないかと思います。そんなすぐには変わらない。細かいことの積み重ねなんだろうなと。

 そして今回一番印象に残っているのは、「帰ってきたのは自分が後悔しないため」という言葉です。
自分が後悔しない選択が後を継ぐことだったという矢板さん、こういった主体的に戻ってきた後継ぎの方がいることは、自治体にとっても大変プラスになることだと思います。
 また、都内のベンチャー企業で働いていた経験から、携帯ゲームに熱中するのは地方の人が多いという話も興味深かったです。良い悪いは別として、それだけ地方は娯楽がない、遊びの選択肢が少ないということなんだなと改めて思いました。

 個人的に、共通の趣味の話題で盛り上がれたのも嬉しかったです!矢板さんが音楽好きでフェスに行ったりしているとのことで、私も音楽やライブが好きなので、その辺の話もできて楽しかったです。
矢板さん、お忙しい中お時間いただき、本当にありがとうございました。

えのもと

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東京生まれ埼玉育ちの元OL。
栃木県那須烏山市 地域おこし協力隊の一人。
お米と猫と洋楽が好き。好きな海外バンドが来日すると弾丸で上京します。

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